6月25日〜26日、幕張メッセで開催された「AWS Summit Japan 2026」に参加してきました(というかほぼ画面にかじりついてライブ配信を見てました)。今回は初日の基調講演を中心に、個人的に気になったポイントをまとめておきます。
例年どおりボリューミーな内容で、メモが追いつかないくらいだったので、ざっくり整理しつつ「これは知っておいたほうがいい」と思った部分にフォーカスして書いていきます。
AWS Summit Japan 2026のテーマは「AIエージェント」一色
まず規模感から。AWS Summit Japan 2026は、260以上のセッション・300以上の展示が並ぶ国内最大規模のAWSイベントです。で、今年いちばん目立っていたのが「AIエージェント」というキーワード。
セッションカタログに掲載された167のブレイクアウトセッションのうち、約半数にあたる83セッションがAIエージェントに関連していたそうで、もはや全力投球感がすごい。去年は「生成AIどう使うか」みたいな話が多かった印象ですが、今年は「エージェントをどう本番で動かすか」に完全にシフトしていました。
AWS Summit Japan 2026 基調講演の登壇者と流れ
基調講演は10:00〜11:10の70分。登壇者は以下の方々でした:
- 白幡晶彦氏(アマゾン ウェブ サービス ジャパン 代表執行役員社長)
- デイブ・ブラウン氏(Amazon Web Services、コンピューティング・AI・サービス基盤担当 シニアバイスプレジデント)
- 長﨑忠雄氏(OpenAI Japan 代表執行役社長)
- 歌門正師氏(東京海上日動火災保険 常務執行役員 CITO・CISO)
- 横路隆氏(フリー株式会社 取締役CAIO)
余談ですが、OpenAI Japanの長﨑さんって元々AWSジャパンの代表だった方なんですよね。AWSのイベントに「中の人」として登壇するのは結構アツい構図だなと思いながら見てました。
白幡社長「フライホイールを回すのはAIエージェントだ」
白幡氏のパートはAmazon創業者ジェフ・ベゾス氏が2001年に紙ナプキンに描いたという「フライホイール」の図から始まりました。「AmazonもAWSも、今もあの紙ナプキンの絵で動いている。この輪を回すのは皆さん、ビルダーだ」という話から、現在のAIエージェントがそのフライホイールの強力な駆動力になっているという流れで語られていました。
実例として紹介されたのがBlue Origin(ジェフ・ベゾス氏創業の航空宇宙企業)。2700以上のAIエージェントを本番稼働させており、従業員の約70%が活用した結果、数年かかるはずの仕事が数日に短縮されたとのこと。
ソニーの事例も出てきて、全社員向けにエンタープライズLLMを構築し、6万5千人以上が利用、1日15万件の推論リクエストを処理しているという話が紹介されました。これ、規模感がバグってるレベルです。
白幡氏は「AIエージェントを使いこなせるのは、自分自身のフライホイールを持ち続けている企業だ」という言葉で締めていて、ツールを使うだけじゃなくて継続的に回し続ける仕組みを持つことが重要だというメッセージは刺さりました。
ブラウン氏が紹介した新サービス群
続いて登壇したデイブ・ブラウン氏のパートが情報量的にはいちばん多かった。1週間前の「AWS Summit New York 2026」(6月17日開催)で発表された内容を日本向けに紹介する形でした。
ブラウン氏はAWSのAIエージェント関連サービスを大きく4つの領域に分けて説明していました:
① 業務のためのエージェント
「現在の働き方は多数のツールと分断された情報によって阻害されており、作業のたびに文脈が途切れている」という問題提起から、Amazon Quickが紹介されました。ユーザーが「ほしいアウトカムを伝えるだけで、メール・Slack・ドキュメント・データレイクなどを横断して自律的に実行する」エージェントとのこと。正直まだ全容はよくわかってないですが、ツール間の「文脈の断絶」を埋める存在を目指しているらしいです。
② 開発のためのエージェント
ここが個人的にいちばん興味深かったパート。AIエージェント型IDE「Kiro」の話です。
Kiroはプロンプトで指示すると、要件・設計・実装タスク・テストを生成する「スペック駆動」のIDEで、「速いだけでなく設計上正しいコードが作れる」というのがウリです。
事例として紹介されたのがインドの証券取引プラットフォーム「Dhan」。当初12人以上の開発者と24カ月を要すると想定していたプロジェクトを、Kiroを使って1人の開発者が2カ月で完成させたという話で、ちょっと笑えないレベルの数字でした。
さらにAWS Summit New Yorkで発表されたのが「Kiro for iOS」(プレビュー提供)。iOSネイティブアプリで、スマートフォンからコーディングセッションを実行できるもの。エージェント自体はクラウド上(ユーザーのドメイン環境)で動作するので、セキュリティ要件を満たしつつモバイルから操作できるというアーキテクチャになっています。
他にも、システム運用を担うAIエージェント「AWS DevOps Agent」にリリース管理機能が追加(プレビュー)されていました。コードをリリースする前に準備状況やコード変更を確認できる機能で、開発サイクル全体をカバーしようとしているのが伝わってきます。
③ セキュリティのためのエージェント
「AWS Continuum」(ゲーテッドプレビュー)が紹介されました。コードの脆弱性を自動検出・優先度付け・修正まで行うツールです。CIパイプライン(CodePipeline、GitHub Actions、GitLabなど)に統合でき、古い依存関係からCVEリスクを継続的に低減する仕組みも含まれています。
セキュリティ系はまだプレビューの段階ですが、「AIでセキュリティを攻撃する側がいるなら、守る側もAIで対抗する」という流れは今後加速しそうです。
④ エージェントの構築基盤
「Amazon Bedrock AgentCore ハーネス」が正式に一般提供(GA)されました。AIエージェントの実行環境で、モデルとツール・スキル・設定手順を定義するだけで、オーケストレーションループをコーディングせずにプロダクショングレードのエージェントが作れるというものです。
モデルとは切り離されているので、任意のモデルを選択してエージェントを構築できる点が地味に重要だと思っています。Claude APIも使えるはずで、ここは個人的に試してみたいところです(まだできてないですが)。
「AWS Context」も発表されました(Coming Soon)。組織内の既存データの関係性を自動的にナレッジグラフにマッピングし、AIエージェントがガバナンスのきいた形でデータ関係にアクセスできるようにするサービスです。
OpenAI Japan・長﨑氏の話が面白かった
ゲストとして登壇したOpenAI Japanの長﨑氏は、OpenAIのモデル開発期間がAIエージェントによって15分の1に短縮されたという話をしていました。また、モデルのリリースサイクル自体も以前の約15か月から1か月半ほどへと劇的に短くなっているとのこと。
AWSとOpenAIのパートナーシップについては、フロンティアモデルの提供など複数の要素があると説明されていました。
国内事例:東京海上日動とフリー
東京海上日動火災保険からはCITO・CISOの歌門正師氏が登壇。保険業務が800以上のシステムで成り立っていることが開発スピードの大きな制約になっていたと話し、AI駆動開発(AI DLC)がその打開策になったと説明していました。
「要件定義からソースコードまで、必要なアウトプット資料はすべてAIが作成し、重要な判断は人間に委ねる」という取り組みで、ある業務システムでは開発速度が従来比10倍になったとのこと。
フリー社の横路CAIO氏の話については、正直ライブ配信を追いきれていないのであまり詳細を書けませんが、会計・バックオフィス領域でのAIエージェント活用という文脈だったようです。
個人的な感想と今後気になること
今年の基調講演全体を通じて感じたのは、「AIエージェントはもう実験フェーズじゃない」というメッセージの強さです。Blue Originやソニーのようなグローバルなユースケースだけでなく、東京海上日動のような日本の大企業事例を出してきたのも、「日本でも本番稼働は現実だ」というメッセージだったんじゃないかと思います。
個人的に今後試してみたいのは:
- Bedrock AgentCore ハーネスが GA になったので、Claude APIと組み合わせて何か作る
- Kiro、まだちゃんと触れていないので使ってみる(Cursorとの使い分けがどうなるか気になる)
- AWS Continuumのプレビューに申し込んでみる
「AIエージェントを構築する基盤が整ってきた」という感覚は確かにあって、あとは自分が使いこなせるかどうかの話になってくる気がします。そこが正直いちばんの課題です。
オンデマンド配信も順次公開されるらしいので、見逃した方はそちらも合わせて確認してみてください。
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